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ヴィルヘルム・ミュラーの生涯と作品 ―― 『冬の旅』を中心に東北大学出版会,2017年7月6日刊行)  -2-
 

 

博士論文との主な相違点
本書は,2009年度東北大学大学院文学研究科文化科
学専攻博士論文「ヴィルヘルム・ミュラーの詩作と生涯 ―― 『冬の旅』を中心に」を改稿したものです.
博士論文をご指導くださった東北大学大学院文学研究科ドイツ文学研究室の先生方をはじめ,これまでご指導してくださった先生方,支えてくださった方々に感謝します.

 

 

博士論文との主な相違点は,次のとおりです.

1.文献と注を整理し,序章を簡潔にするなどして原稿用紙百数十枚分ほど割愛した

2.用語の多くを,できるだけわかりやすい日本語にした

3.ミュラーの詩作品は,当時の詩集より直接引用した

4.ミュラーの小説『13番目』,継母,ミュラー像や墓,近年の動向等を加筆した

5.全体的に改訳し,批判的に校閲した


出版までの経緯
著者は博士課程修了前2010年3月より,東北大学出版会から学術書として上梓することを目標に,博士論文を改稿する一方で,雄松堂内日本博士論文登録機構様から博士論文をオンデマンド出版していただきました.出版会に申し込んだのは,雄松堂様と丸善様との合併により,2016年2月1日に博士論文登録機構が閉鎖となって間もなくのこと.企画提案書の審査,査読,査読報告書に基づく改稿提出,さらに協議を経て,初秋には出版計画が決定していました.秋の入稿から刊行まで時間がかかったのは,著者が校閲を繰り返したためです.特に結語には,本文と同じ位時間をかけました.最も読んでいただきたい箇所です.

 

東北大学出版会のみなさま,東北大学生活協同組合の方々,度重なる校正に快くご対応いただき,ありがとうございました.とても上品できれいに仕上がり,本を手に取るたびに,担当してくださった方々に感謝しております.

装丁について
美しい装丁をしてくださったのは大串幸子さんです.この装丁はたいへん好評で,I 先生からは「非常に品があり,濃紺の色使いがとても安心感を生み出しており,本の内容の充実度,真摯さを感じさせる」とのご感想をいただいております.大串さんは,入稿時の原稿をすべて読んでくださり,『冬の旅』をはじめとした関連作品を何度も聴いて構想を練られたそうです.実際の作業中にもそれらの作品をBGMとして流されていたと伺っております.ミュラーの肖像には,このサイトにも使用している著者撮影のものを使ってくださいました.カバーもオビも本体の表紙もそれぞれ2種類の案を出してくださり,別案もたいへん惜しいほど魅力的でした.オビの画像はブナ林でしょうか.それならヨーロッパと日本両方にあるので,日本語によるドイツ文化の本に相応しいと思います。注目すべき箇所は,出版会名の傍に描かれた五線です.この五線は,シューベルトの音楽によってミュラーの詩がさらに高められたことを表しているように感じられます.さらに本書は本体の表紙に微妙な配色がされ,紙の感触が良いので,図書館等でカバーを外して配架されてもその魅力を失いません.ブナ林と五線がドイツの冬を思わせる微妙な色使いと調和し,本来なら冬に葉はないのに心の中で葉音が聞こえる「リンデの樹」が感じられました.作品の内なる苦悩と外部の寒さを表現しているかのようです.美しいカバーを鑑賞された後は,ぜひ本体に触れ,その感触もご堪能ください.原稿を全文読んでくださった専門家だからこそ成し得た芸術品です.大串さんには心より御礼申し上げます.

上はオビ,下は本体の表紙です。

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