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書 評 Review 主な書評を掲載します.

 

渡辺美奈子著
ヴィルヘルム・ミュラーの生涯と作品

―― 『冬の旅』を中心に
 

Watanabe, Minako: Wilhelm Müller's Life and Works ― Poet of "The Winter Journey (Die Winterreise)", Tohoku University Press,  2017.



日付降順 

 

1.『ドイツ文学』第158号(日本独文学会)20193月,160-164 頁に,拙著の書評が掲載されました.評者は,松下たゑ子先生(ドイツ文学・成蹊大学元教授)です.先生は,本書を熟読された上で,専門的な視点から,たいへん好意的に書いてくださいました.先生の人となりが伝わるような評で,機会があれば,会員以外の方にも読んでいただきたいと思いました.163頁下から2-3行目に「8 番目の詩(シューベルトの歌曲では 7 番目)」と書かれていますが,「おやすみ」は「冒頭詩」で,シューベルトの歌曲集でも最初の歌曲です.謹んで訂正させていただくことをお許し願います.

2.『東北ドイツ文学研究』第59号,東北ドイツドイツ文学会,201812月,129-132 頁に拙著の書評が掲載されました.評者は,山下剛先生(ドイツ文学・東北医科薬科大学教授)です.先生は文学だけではなく音楽にも詳しく,かつて本ウェブサイト用にも書評を書いてくださいました.Nr. 4 も読んでいただければ幸いです.

3.  FlaschenpostNr. 39,ゲルマニスティネンの会20185月,16頁に,末松淑美先生(ドイツ語学・国立音楽大学准教授)による拙著の書評が掲載されました.ゲルマニスティネンの会のWebサイトにもアップロードされています.

本書を精読してくださった上で,簡潔かつ内容を非常にわかりやすく評してくださいました.会員以外の方にも読んでいただけたら幸いです.16頁までスクロールしてください.

4.山下剛先生(ドイツ文学・東北医科薬科大学教授)が本ウェブサイト用に書評を書いてくださいました.(20178月) 

   

 ヴィルヘルム・ミュラーと言えば、シューベルトの連作歌曲集、とりわけ『冬の旅』の詩を書いたドイツ・ロマン派の詩人としてその名が知られているが、それ以上の詳細については肩をすくめるしかなかったのが実情ではないだろうか。本書ではミュラーの生涯と作品が編年体で丁寧に紹介され、我々読者はこの詩人の全体像や作品成立の背景を初めて知ることになる。

  ヴィルヘルム・ミュラーが生きたのは、ナポレオンによるドイツ支配とそれに対抗する解放戦争、そしてナポレオン以後の保守反動の時代であった。ミュラーは愛国的な人物としてこれらの時代と積極的に関わっていく。そしてそこで得た経験の一つひとつが創作の中に取り込まれ、さまざまなモチーフを形成し象徴性を獲得しながら、それらが最盛期の『冬の旅』に流れ込んでいく。本書ではその様子が日記や書簡といった一次資料を駆使して実証的に示されている。

 本書の大きな特色の一つは、多くの詩が韻律の面から精緻に分析されていることであろう。これによって、ミュラーがシューベルトへの詩の提供者であるばかりでなく、ドイツ詩の長い伝統に連なる一人の詩人であることも浮かび上がってくる。

  そして、本書で最もスリリングなのは、終章の「ミュラーとシューベルト」であろう。この章では文学と音楽のコラボレーションの実態が明らかにされている。すなわちミュラーの詩とシューベルトの音楽のそれぞれの主張がどのようにぶつかり合い融合して、『冬の旅』という連作歌曲集が成立したのかが、詩の韻律や楽曲の分析を交え説得力をもって解説されているのである。実際の演奏においても示唆するところが多いだろう。音楽関係者にも是非一読をお勧めしたい。
 

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